どうしようもなく
ボンゴレ上層部は協議の結果、再度ボンゴレ十代目守護者メンバーにボンゴレリングを配ることを提案した。
長いこと幹部の椅子に座り続けている老公達は古きに拘る頭の固さを持つ反面、戦力強化には積極的な物騒な傾向にある。(穏健派と称しついる方々ですら、だ!彼らも所詮はマフィアということか。)
基本的にいつだって平和主義を掲げたい綱吉にとっては
マフィアのそういう思考は相容れない。その頂点に立っている現在でさえ、理解はできても納得はできないのだ。
だからもちろん今回の件に関しても綱吉は反対だった。
いつも掟が、伝統が、と口癖のようにいう老人達に『ボンゴレリングの所有は次代の後継者のみ』という決まりを指摘しもした。しかし、普段あんなに掟に厳しいくせに、こんなときばかりあっさりと例外を認めたのだった。
その時、綱吉が(こぉんの、古狸どもがぁ!)と内心叫んだか否かは…本人と読心術を心得ている彼の家庭教師と神のみぞ知るというところだろう。
ともかく、そんな訳で今ボンゴレリングは綱吉の元にある。
「はぁ、(…どうしよう)」
最終決定権はボスである綱吉に委ねられている。ボンゴレにおいては超直感を持つボスの判断はある意味絶対的なのである。だから、この提案を一蹴することは可能だ。
――――ボンゴレリングを今再び表に出すことは、新たな争いの火種になるだけではないのか。
――――未だ未知の部分の多い力を戦力として用いるのはその暗部ゆえに、また大き過ぎる力ゆえに危険性が高いのではないか。
…等いくつか不安要素もある。
そして、それらを抜きにしても綱吉は是と言いたくないと思っている。…あくまで個人的な話であるのだが、正直なところ、綱吉はボンゴレリングというものに対してあまり好印象を持っていないのだ。
本人曰く、「というか初っぱなから印象最悪だったしな!」とのこと。
第一印象は混乱。
なんたって休日にいきなり騒動に巻き込まれることから始まった。その上ボンゴレが敵でボンゴレじゃない人が味方だとかワケわかんないし。
第二印象、物騒かつ面倒。
持ってるとおっかない連中(ロン毛筆頭その他)に命を狙われるとか、そもそもリング所有イコールマフィア確定という大前提からして当時のオレにはいただけない話である。
でもって最後に、面妖。
燃えるし溶かすし血は吐くし。何より気味が悪い。実をいえば、リング争奪戦の後でこっそり捨てたことがある。なのに何度捨てても気付けば手元に戻っていたときは正直背筋にひやりとしたものが走った。(はじめリボーンの仕業かとも思ったけど、なんとなく違う気がした。あれだ、例のブラッドオブボンゴレとやらが違うと囁いていた)
てかアレはもう呪いのアイテムか何かじゃあないか?!(例の色黒でマスクでタヌキな「貴女方もしやクローン人間??」と聞きたくなるお嬢さん方には、『リングが貴方を選んだのですよ』なんて言われた。…それも気味悪いんですがっ?!!)
……つまるところ、綱吉自身はボンゴレリングを再び所持したいとは全く思っていなかった。
どうしようもないくらいボンゴレリングに対して妙なトラウマを抱えてしまっていた綱吉は、ある意味、争いの火種になるだとか強すぎる力の危険性だとかそういった大義名分を通り越して、リングの廃棄を押し通してしまいたかったのだとか。
………………真相は定かではない。