中秋の静かな夜。
時計の両針が頂点に上がりきるかどうかというころのこと。
ホワイト・オパールを掲げて
自室のベッドに横になっていた男は、微かな気配に浅い眠りから覚醒する。
そのままざっと探れば、すぐに人ひとり分の気配を見つけた。
こんな真夜中に男の部屋にやって来る者など、刺客くらいのものであるが、しかしどうやらその人物は気配を抑えることも周囲に身を隠すこともせず扉の前に佇んでいるらしかった。
(…ふん、どこの身の程知らずだ?)
同業として暗殺者にあるまじきその様子に呆れるものの、襲ってこようものならすぐさま返り討ちにしてやろうと身を起こす。(当然、こちらは相手とは違い決してこちらの気配を相手に悟らせるようなことはしないが。)
しかし、部屋の外の人物は襲撃をかけてこなかった。それどころか戸を叩いて挨拶をしてくる始末。
「こんばんは…XANXUS」
聞き覚えのあるその声に来訪者の正体を知った男――XANXUS――は、先刻とは別の意味で呆れた。寧ろ怒りすら沸いてくる。
時期、時刻、場所――――そのどれをとってみても、その人物は居るはずがない、否、居るべきではない人間だった。
(自分の立場ってモンを解ってねぇのか、このドカスっ!!)
はたして音にしなかったXANXUSの罵倒が聴こえたのか、扉越しの相手の気配が少々変わる。次いで慌てたように、
いやごめんなこんな時間に迷惑だよないやいやホント申し訳ないだけどちょっと話したいというかあーまぁともかく。
一気に早口で捲し立ててから(ただし小声。とりあえず深夜であるため周囲を気遣って声を落としているらしい。そんな気遣いをするくらいならはじめからこんな時間に来るなと言いたい。)、こちらをうかがうような声音で、
「…入ってもいい、かな?」
おずおずと入室の了承を求めてくる。
「………」
情けない。声だけでとてつもなく情けなかった。同じく向こう側にいる本体もそれはそれは情けない顔をしていることだろうと見ずとも容易にその表情が脳裏に浮かんだ。(相手の顔色をうかがうような表情と態度は奴のよくするもので散々見馴れてしまった。)(そういう態度も含め、どこまでもその立場と本人の言動が合っていない。)
そこまでを瞬き一つの間に考えて、XANXUSは行儀悪く舌打ちを一つした。あらい足取りで広い室内を扉へ向かって歩いていき無言で扉を開ければ、予想に違わずそこには情けない男が一人立っている。
「あ、ありがと。」
勝手に開いた扉に一瞬ほけっとして、それから目の前にいるXANXUSを見て、ああそっか扉が勝手に開いんじゃなく彼が開けてくれのかと考えて、その人物は内心、
(うわ、あのXANXUSがわざわざ開けてくれるなんて…槍でも降ってくんの?)
などと失礼なことを考えていたが、すぐに感謝の言葉を告げる。
重力に逆らったチョコレートブラウンの髪と同様に甘い色の瞳を持つ彼は、名を沢田綱吉という。
見掛けだけ見れば、年の頃は十代半ば。中肉中背。ぱっとしない平凡な顔立ち。そんなどこにでも居そうな東洋人の少年だ。
しかし、およそ裏社会とは無縁そうに思えるこの少年こそが、イタリア最大のマフィア・ボンゴレファミリー十代目ドンとなる男なのだった。
中途半端ですみませんまだまだ書き途中です。(終わんない…OTL
XANXUS誕生祝がメイン(のはず)なので、できてる出だし部分だけでも10/10のうちに上げておきます。10/14の綱吉誕生日とも繋がる話なのでそれまでに完成できるといい、な。……、…無理そう←
(2008/10:追記)
丸一年放置の末、完成を諦めました(爆)
以下、自分の技量が足らず書けないけど、書きたかったあらすじ設定だけ書き出しておきます(完全なる自己満足)
・10月10日真夜中にXANXUSのもとを訪ねるツナ。
・誕生日祝いと称して渡したのはホワイトオパールの指輪。
・オパールは10月の誕生石。…そして『希望』という意味を持つ。
・特にホワイトオパールは、やわらかな白が持ち主をやさしく包み込むとされている。
・それは、かつて絶望を怒りに変えることしかできなかったXANXUSへの、ツナなりのメッセージ。
・「ボンゴレリングの代わりになんてならないだろうけど」とツナ。
・ツナは数日後の18才の誕生日にはボンゴレの襲名を控えていた。
・「いまでもマフィアは怖いし人を殺すなんて嫌だけど、自分の守りたいもの達のためにマフィアを継ぐと決めた。」
・「今後たくさんのひとの命を左右する責任もその命の重みも背負う。」
・そう、XANXUSから『ボンゴレ十代目』を奪ってしまうことへのケジメも含めての訪問だったのだとXANXUSに自分の覚悟を静かに語る。
・そんなツナにXANXUSはしかし、こんなものは無意味だと告げる。
・自分にも不釣り合いだ、と。
・XANXUSの言葉に、「そう…」ととぼとぼ帰るツナ。
・しかし迷惑だったかと落ち込むツナの考えとは逆で、実はXANXUSは怒ったわけではなかった。
・むしろツナの行為に戸惑っていたのだ。
・かつてその命を狙った自分を許して対等に向かい合い、あまつさえ自分の誕生日を祝福するというツナの行動に調子を狂わせる。
・その上プレゼントが『希望』のメッセージが込められた指輪。
・不釣り合い、と言ったのも、熱や衝撃に弱い繊細なオパールには自分は似合わないと思ったからだった。
・しかし、XANXUSは「ボンゴレを継ぐ」と強い意志を見せたツナの姿に何か感じるものがあった。
・そして、10月14日の襲名式。大勢の者達の目の前で、XANXUSは十代目を襲名したツナに膝を折る。
・その指先にはツナに渡されたホワイトオパールの指輪が虹色に輝いていた。
・あの晩、XANXUSはツナが去ってからある決意をしていた。
・敵を許し他人をばかり心を配るツナに、その優しさに、甘いと思いつつももう悪感情は持てなかったXANXUS。
・でもそのツナの優しさはマフィア社会では絶対に切り抜け慣れない時もくる。
・だから自分がその闇の部分を受け持ってやる、と。
・「誓ってやる」指輪をツナへ見せて、ホワイトオパールを掲げて告げるXANXUSの姿があった。