今日は久しぶりにボンゴレの予定も何も無い日だったから、ツナのところに遊びに行った。そしたら、ツナはパソコンをじっと見ていて、どうやら日本の高校野球を観戦していたらしい。
ツナはこっちに来てから定期的にネットでいろんな国のニュースなんかを見てる。(各国の情勢なんかを把握しておくことはボスとして大事なことだとか家庭教師様に言われてるらしい。いまの時代、情報を集めるならネットが一番簡単かつ迅速だ。)でもって、気になるものがあったりするといつの間にか国政とかマフィアとか関係ない内容の方に逸れてくことがたまにある。今回もおそらくそんな経緯で野球観戦に至ったのだろう。
甲子園かー。中学終わってすぐにこっちに来たから実際にマウンドに立ったことは無いけどいいよなー。ツナの隣から覗き込んで試合を見ると、丁度ピッチャーが投球したところだった。良い球投げんなー。なんて思いながらツナと話していたら、ツナが意外そうな顔して質問して来た。
……オレ変なこと言ったか? 別に全く忘れてたってわけじゃないが、イタリアに来てからはあんまり日本のこと気にしてなかったし。ま、ツナ達と過ごすこっちでの生活は日本にいた頃と変わらず楽しいからな!
けどなんでか、ツナのやつ、急に黙ってしまった。俯いて手を胸の辺りに持っていく。これは多分リングを弄ってるんだろう。イタリアに来て3年って話をしたから昔の事でも思い出してるのかもしれない。
暫らくツナの様子を黙ってみていたけど、なんだか様子がおかしい。ツナは椅子に座っている上に俯いているからオレからツナの顔を見ることは出来ない。けど、なんとなくおかしいのはわかった。
慌ててオレはツナに声をかける。何回か呼ぶと気付いたのかツナが顔を上げた。じっとオレを見上げてくるツナの瞳にはほんの少しだけど不安の色があった。(坊主にポーカーフェイスを教え込まれて昔より大分感情を隠すのが上手くなったツナだけど、オレ達仲間内にはまだまだ豊かな表情を見せてくれるし、隠そうとしてもこんな風にバレバレだ。)オレはツナが安心できるように、いつも通りの笑顔で笑いかけた。
ツナは俺の目を見据えながら、何処か真剣に、ゆっくりと言葉を発した。

「―――ねえ、山本。」
「なんだ?」

オレが続きを待っていると、けど、ツナは少し迷う様子を見せてから

「……ごめん。やっぱりなんでもないよ」

困ったような諦めたような顔で笑った。


When I ask you, − side Y −


(――――そうやってまた、何も言ってくれねぇんだな)

オレは心の内でそっと溜息を吐いた。
ツナは最近こういう顔をよくするようになった。なんとなくなら、その原因に予想もついている。
ツナがこんな風になりだしたのは今年の6月末、高校を卒業した後くらいからだ。
以前から決まっていたことではあるが、高校を終えたオレ達は本格的にボンゴレとして動きだしていた。そして、今度のツナの18の誕生日が来たら、ツナは正式にボンゴレ十代目を襲名して、オレ等は守護者として幹部の席に座ることになっている。
イタリアこっちに来る前は「マフィアになんかならない」って口癖のように言っていたツナだったけど、今では既にボスになる決心はついてるからボンゴレを継がないなんてことは無いだろう。それでも優しいツナだからボンゴレの椅子が持つ重み―――言葉一つで、幾人もの人間の生死を左右する立場に立つこと―――に不安や苦悩が無いはずなくて。
だから、そこらへんにツナの様子がおかしい一因があるだろうってオレ等幹部(予定)の連中はみんな考えてるけど、本当のところはツナの心はツナ自身しかわからないから。

―――なら訊けばいいのだ。 何悩んでんだ、オレでよけりゃ力になるぞ、って。

そう考えて、けど行動を起こす前に『ツナ自身の問題なのだからいちいち口出しするな』ってリボーンに釘を刺されてしまっていた。(オレ達に『甘やかすな』っていう坊主自身だって本当は心配しているくせに。)
とにかくそんなわけでツナから行動を起こしてくれるのを待つしかなくって様子見しかできないでいる。けどツナは何も言ってきてはくれなくて、いつだって肝心なところでは我慢して自分の中に押し留めちまう。……いまみたいに。

なあ、なんでそんな悲しそうな、…淋しそうな顔すんだよ。
そんな顔して、そのくせ笑うツナを前にすると、坊主に止められててもオレの方から訊いちまいたい衝動に駆られる。ツナが話してくれればいくらだって相談に乗るし、力になる。オレに出来ることなら何だってしようって思ってる。

(お前を支えたいって思うけど、オレはバカだから、言ってくんなきゃわからねえんだ。)
(だからさ、ツナ。そんな顔するくらいなら話してれよ?オレたち親友だろ。)

オレさ、ツナ。お前とダチになってから今までの日々は、オレとツナと他のやつ等も皆でバカみたいに騒いで笑って、それがすげー楽しいんだ。(他のクラスメートと喋ったり部活してんのも楽しかったけど、あいつ等には悪いけどツナ達と一緒のときの方が断然面白くって楽しかった)
ツナが笑ってて、その傍で俺も笑ってるのが好きなんだ。
今だって(まあ、ちっとばかし物騒だけど)昔とおんなじだ。
無理した笑顔じゃなくて、楽しそうに嬉しそうに笑ってるツナの隣でオレも一緒に笑いてーって思ってる。


だから、困ってんなら頼ってくれればいい。悩んでるんなら相談を、辛いんなら愚痴をこぼすんでもいいんだ。

――――その心を塞ぐ重たいものを吐き出して、心からの笑顔をみせてほしい。



( 望むのは、 )

( 幸せそうな 貴方の姿 と その傍には 自分がいるということ )
なんか山ツナっぽい…? カプ要素はないつもり。あくまで友情です。

タイトルは、ツナから山本へ、山本からツナへ、両方ともの意味合いを込めて使わせていただきました。
ツナも山本も相手に訊きたいけど、訊けないでいる。
もし尋ねたならどんな答えが返ってくるのか。 ツナはそれが怖い。
もし尋ねたとして答えが返ってこなかったら。 山本はそれが辛い。  ……そんなかんじ。(になってればいいなぁ;)