いつだって、

それが、

ぼくらを突き動かす、



――――原動力。










My motive power is ...











未来の世界の平和のため。白蘭との戦いのため。ボンゴレ匣を開匣するため。――――入江正一の指示に従い、アルコバレーノの印を得るために十年後の世界から本来の時代へ一時帰ってきた綱吉達。
一週間という期限の中、アルコバレーノの印を受け取る資格を試されるアルコバレーノの試練をなんとか5つまで乗り越えた彼らだったが、しかし6つ目――黄のアルコバレーノにして世界一のヒットマン、そして彼らをここまで鍛えてきた最強の家庭教師であるリボーンの試練を、完全なる敗北という結果に終えてしまう。
リボーンが去った並盛島では、綱吉は身体が負ったダメージとそれ以上に感じている精神的ダメージに沈んだ気持ちでベッドに横たわっていた。
それは綱吉だけではなく、仲間達も皆それぞれに、突き付けられた圧倒的な実力差や本気の殺気への恐怖心、敗北感…それらの思いを持て余しているようだった。
それでもこちらを気遣ってくれる彼らの優しさに、綱吉はありがたくも申し訳なさが先立つ。…あの時自分が唯一の勝機を逃さなければ、と。

(…“覚悟がない”、か。)

―――仲間がぼろぼろになって戦ってんのにまだ甘さが捨てきれねぇのか―――
―――仲間のため、世界のために戦う覚悟が…お前にはない!!―――

脳裏に繰り返されるのは、勝負の終わりに告げられた家庭教師の厳しい言葉。
確かにその通りなのかもしれない。リボーンが次の相手だと聞いて戸惑い、リボーン相手に全力で戦えず…結果、皆を傷つけて、試練も不合格を言い渡されて。

(ははっ…ほんと、ダメツナだな…オレ)

自分を振り返れば小さく失笑が溢れる。多分、綱吉は心のどこかでリボーンに甘えていたのだ。
リボーンは他のアルコバレーノ達と違い未来の世界での事情を知っているから。俺の家庭教師で俺達の仲間だから。…だから何だかんだ言っても最後には助けてくれるのではないか――修行の延長線上のことのような気持ちで、そんな風思っていた部分がなかったとは言いきれない。
生徒のことを生徒本人以上によくわかっている家庭教師のこと、おそらくはそんな綱吉のリボーンに対する無意識の甘えを解っていただろう。だからこそ本気で戦い、試練に挑むことの意味、覚悟の意味を教えようとしていたのだ。

(きっと、リボーンの言う通りだ…)

リボーンの厳しい言葉の一つ一つをよく思い返す。それから共に戦ってくれる守護者達、巻き込んでしまった少女達や未来で自分を信じて待ってくれている仲間達のことを。
…待ち受ける未来での戦いでみんなを守りたいなら、その為に試練を乗り越えなければならないなら――たとえ相手がリボーンでも、本気で戦わなくてはいけない。
――――それができなくちゃ、きっと本物の覚悟とはいえないんだ。
(…本当は、心の隅でそれでもリボーンと戦いたくないという自分がいたけれど。)それでもこのままで終わるわけにはいかないから。
決意を守護者の仲間達に語りながら、自分自身にも言い聞かせる。

そして再会したリボーンに再度チャンスを求めた……そんな直後のことだった。
――――最後のアルコバレーノ、緑のヴェルデからの攻撃を受けたのは。



  *****



「こいつらを助けたいなら、ボンゴレリングを渡してもらおうか。」

アルコバレーノの掟を破りボンゴレリングを狙うヴェルデの策略に嵌まり、捕らわれてしまったリボーン達を人質に、ボンゴレリングを渡すよう要求される。
リボーン達かボンゴレリングか。そんな二択などどちらも選べるわけがなく自分達の手でリボーン達を助け出すと決断する綱吉達だったが、リボーンとの戦いで負った傷が癒えない身体で思うように戦えない上に、死ぬ気の炎までも奪われ逆に自分達の死ぬ気の炎で強化された匣兵器の試作品に追い詰められてしまう。
反撃しようにも気力が足りずに立っていることすらままならない、それでなくとも傷の癒えきらない身体に無理をさせすぎて、誰もがふらふらだった。

「リボーン…」

ヴェルデの発明品に囚われ、空中でノン・トゥリニセッテに似た効果を持つ物質を浴びせられぐったりとした様子の家庭教師を仰ぎ見る。

「…みんな…」

それから苦しげに膝を折る仲間達を見る。


―――仲間がぼろぼろになって戦ってんのにまだ甘さが捨てきれねぇのか―――


戦うべき者として対峙してそう言われたのは、つい数時間前のことだ。みんなが傷ついて、それでも、リボーンに]BURNERを撃てなかった自分。
敗因は覚悟が足りなかったからだなんて、みんなには言ったけれど。――――でも本当は、どんなに必要でも、甘いと言われても、やっぱりリボーンと戦いたくなんてなかった。

(…そうだよ。だって――――)

獄寺、山本、雲雀、了平、クローム。
物陰で震えるランボに、師匠を助けようと必死に自分を奮い起たせるイーピン。

(だって、オレは…)

…それから囚われているリボーン達アルコバレーノ。

確かに未来の世界の平和も守りたい。未来の自分が、仲間達が死んでしまうようなあんな未来は決してごめんだ。
けれどもやっぱり本当は、綱吉にとっては大儀な使命感よりも、綱吉とっては今目の前にある現実が一番で――ダメツナの自分には目の前の手の届く範囲のことて手一杯で――、いつだって守りたいのは、いま、ともにいる仲間達なのだ。
どんなに大切な試練でも、リボーンがアルコバレーノでも――――綱吉にとって、リボーンは仲間だから。

「オレは…みんなを――――」

(オレの大切な仲間達“みんな”を――)



「――――守りたいんだ…!!」



その強い願いに呼応するように、体の奥から綱吉自身尽きたと思っていた気力が溢れてきて、強大な死ぬ気の炎となって目の前の匣兵器を吹き飛ばしていた。

「…十代目!!」
「ツナ!」

そんな綱吉の姿に――自分達を守るためにこそ強くなろうとする彼の覚悟に――守護者達にも不思議と力が湧いてくる。
そんな彼だからこそ、共に戦いたいと思い、守りたいと尽くし、面白いと興味がつきない。守られてばかりはいられないと自然と心が奮い起ち、笑みさえ浮かぶ。
(そうだ、俺達はまだ戦える――――!)



そう、
いつだって、
僕の、僕らの原動力は、


(みんなを守りたい)(君を守りたい)


――――この想いひとつ。


END.
TO 佐和月水葉 様 Thanks for 31000 hits !
(2009.10.02 Akisora [http://murakumo.yu-nagi.com/sky3/])