ヒットマン編2 勝利の方程式
ナミモリタウンのツナヨシくんはマフィア地方ではなかなかに名の知れたトレーナーです。
はじめは、ボンゴレ博士という著名な人物と知り合いであるということがきっかけで名前が知られるようになったのですが、やがて行く先々で数々のバトルに勝利し、各地のジムを次々と制覇していく少年とそのヒットマンたちの活躍が人伝に噂となって広がっていったのでした。
本人にその気はあまりありませんが、ゆくゆくはトレーナーの頂点『ドン』の名を冠することも夢ではないと言われ、数多くの期待と羨望、嫉妬等に溢れた日々を過ごしています。
そんなツナヨシくんの周りは毎日とても賑やか。
特に彼の手持ちヒットマンたちは、その誰もが個性豊かな面々です。

今回はそんなツナヨシくんの周囲を彩るヒットマン達のお話をしましょう。



勝利の方程式
ツナヨシくんがトレーナーとして地方にその名を馳せるようになったその理由に、ゴクデラ以外にもう一匹…リョーヘイという格闘タイプのヒットマンの存在がありました。
リョーヘイはもともとはツナヨシくんの手持ちではなく、キョウコという少女のヒットマンです。
キョウコとリョーヘイは兄弟同然に育ってきたとても仲の良いパートナーですが、ヒットマンとして、またキョウコを守る兄代わりとして更なる強さを求めていたリョーヘイは武者修行のためにツナヨシくんについてきたのです。

最強を目指してリョーヘイはツナヨシくんを連れまわし…いえ、ツナヨシくんと共に各地のジムに道場破り…いえいえ、挑戦のために門戸を叩きます。
今日もまた、とある町にてジムバトルの最中のようです。
では、彼らのバトルの様子を少し覗いて見ましょう。



光源はランタンの灯りだけ…
周囲を取り囲むのは十字架と墓石…
おどろおどろしい雰囲気漂う薄暗い闇の世界…
本日リョーヘイが訪れたのはゴーストタイプを誇るジムでした。

(ううぅ…嫌だなぁココ…)

試合はすでに始まっているにもかかわらず、不気味さたっぷりのバトルフィールドの雰囲気に及び腰なツナヨシくん。
しかしリョーヘイの方はといえば、そんなことは全く気にならないらしく、

『よーし!今日も極限に腕がなるぞーーっ!』

とブンブンと腕を振り回しやる気に満ち溢れています。…バトルのことで頭がいっぱいなのかツナヨシくんの様子には気が付きません。
一方、そんな彼らの向かい対峙するのは、黒と黄のツートーンできめた魔法使い風の影2つ――彼らこそ、このジムのジムリーダーとそのヒットマンです。
ジムリーダーがパチンと指を鳴らすとトンガリ帽子のヒットマンの黒い体がスルスルと暗闇に消えてゆきます。
その様子にハッとなるツナヨシくん。怯えてる場合じゃなかったと気を引き締めます。
そもそもジムバトルというものは大抵がフィールドも相手方に有利な条件下になっているものです。この薄暗い闇の中はゴーストタイプにとってはたいへん戦いやすいことでしょう。

(…しまった!暗闇に紛れて攻撃するつもりなんだ…!)

一体どこから攻撃が来るのかと慌て周囲に気を張り巡らします。
数瞬の緊張状態――、そして、
ゆらり。
わずかに空気が揺れ動く感覚に、いちはやくツナヨシくんは叫びました。

「右です!リョーヘイさん、防御して!」

しかし、

『いやっ!防御などぬるいことは好かん!!』
「…はぁっ!?」
『どんな相手だろうと極限にこの拳で打ち砕くのォォォオみっ!!!』
「ちょっ!!!待って…!?」

トレーナーであるツナヨシくんが防御を指示しているというのに、当のリョーヘイはツナヨシくんが指し示した先から姿を見せた影に向かって拳を繰り出しました。
ツナヨシくんの制止の声も虚しく、その拳は輝きを放ち…

『いくぞ、
 極限太陽マキシマムキャノ”ーォォォン!!!

ドゴォッ…!

「なっ…!」

放たれた技は見事に相手の顔面に決まり、勢いよく吹き飛んだ黒い影はそのままトレーナーに突っ込んで行き――…ヒットマン、トレーナーともに動かなくなりました。
パートナー共々気絶し、戦闘不能と化したジムリーダーの状態をみて審判が判定を下します。

《Winner!チャレンジャー!! …勝者、ナミモリタウンのツナヨシ!》

その宣言とともに勝利の証であるジムバッジを受け取ったツナヨシくんですが、その笑顔は勝者であるはずなのに若干ひきつり気味でした。
正直、ツナヨシくんは未だ目を覚まさない相手に、内心、頭を下げたい気持ちでいっぱいです。もしも自分が彼らの立場だったならば、理不尽過ぎると思わずにいられないでしょう。
――――だって相手はゴーストタイプ。そしてリョーヘイは格闘タイプ。

(なんで物理攻撃が効いちゃうのっ!?)

本来ならばありえない、相性の常識を覆す現象です。ツナヨシくんとしてはツッコミたくてたまりません。

『うむ!極限勝利だーーー!!!』

晴れ晴れとした笑顔で純粋に勝利を喜ぶヒットマンの隣で、少年トレーナーは今日もまた、常識すらも無意味と化す力業に乾いた笑みを浮かべるほか術はないのでした。


限特攻−常識=力でごり押し
拍手に載せていた当時はほんのりハロウィンを意識してました(笑)